1086号 労働判例 「エヌ・ティ・ティ・ソルコ事件」
              (横浜地裁 平成27年10月15日 判決)
長年更新を繰り返してきたパート社員に対する雇止めと整理解雇の有効性

パート社員の雇止めと整理解雇の有効性
  解 説

 〈事実の概要〉
 本件は、被告Yのパート社員として15年7か月にわたって、期間1年または3か月の雇用契約を17回繰り返してきた原告Xにつき、Y社がXの業務遂行能力不足ないしY社の業務上の理由により雇止めにしたことのは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上不相当であると主張して、Yに対して雇用契約上の地位確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金・賞与およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。Y社は、テレマーケッティング業務の企画・実施、NTTおよびその関連企業の委託による電話番号案内の委託業務を目的とする会社であり、従業員数は約1万2700名である。X(昭和33年生まれ)は、平成10年6月、Y社に期間雇用のパート社員として入社し、104番に架電してきた顧客に対する電話番号案内業務(104業務)に従事してきた。
 Y社のAセンター所長であるBは、平成25年11月28日、Xの成績不良を理由に同年12月31日をもって期間満了により雇用契約を終了し、契約の更新をしない旨の雇止め(本件雇止め)を口頭で告げた。さらに、B所長は、Xに対して、Y社がCセンターで行ってきた104業務以外の業務を紹介することができる旨をXに伝えたが、Xはその提案を拒否した。Xは、労働審判を申立て、労働審判委員会は2回目の期日に、XのY社都合による退職の確認、Y社からXに対する解決金140万円の支払いを主な内容とする審判をしたが、Y社の異議申立てにより、本件訴訟に移行した。争点は、労働契約法19条の適用、本件雇止めの有効性等であったが、判決は、一部を除きXの請求を認容した。 
 〈判決の要旨〉
 まず、労働契約法19条の適用について、判決は、次のように述べる。Xが従事していた104業務は、Y社の恒常的・基幹的業務であり、Xは、賃金が低く
パート社員として扱われているが、一般の常用労働者とほぼ変わらない勤務条件で勤務していたこと、Xの雇用契約更新状況は約17回の更新を経て勤続年数が15年7か月に及んでおり、更新手続きは、契約期間満了前後にロッカーに配布されるパートタイマー雇用契約書に署名押印し提出するというごく形式的なもので、形骸化していたといわざるを得ないことなどの事実認定に基づき、本件雇止めは、期間の定めのない雇用契約における解雇と社会通念上同視できると認めるのが相当であり、X・Y間の雇用契約は、労働契約法19条1号に該当するとした。その上で、判決は、次の争点について、本件では、実質的な整理解雇があったと認められるとして、いわゆる整理解雇の4要素とされる人員削減の必要性、雇止めの回避努力、人選の合理性、手続きの相当性を順次検討したうえで、本件雇止めにつき総合的に考慮すると、人員削減の必要性の点において客観的に合理的な理由あるいは社会通念上の相当性の要件充足性の程度が弱く、これを補完するに足りる程度の手厚い雇止めの回避努力がされたとは認められず、XとY社は従前と同一の条件で雇用契約を更新したとみなすことができるとした。
 労働契約法19条1号の該当性を認めた判例として注目に値するケースであろう。

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