1120号 労働判例 「ヤマト運輸事件」
              (仙台地裁 平成29年3月30日 判決)
宅急便の運行業務に従事するマネージ社員とキャリア社員の、
賞与の支給の算定方法の差が労働契約法20条に違反しないとされた事例
マネージ社員とキャリア社員間の賞与の支給の差と労働契約法20条

 解 説
 〈事実の概要〉
 本件は、宅急便事業を営むY社(被告)に対して、1年以内の期間の定めのある雇用契約を締結している社員(キャリア社員)であるX(原告)が、期間の定めのない雇用契約を締結している社員(マネージ社員)との間に、賞与の算定方法に不合理な差があるが、これは労働契約法20条に違反する等として訴えた事案である
 Y社のキャリア社員就業規則では、賞与について、「会社は営業成績に応じて賞与を支給することがある」とされていた。実際のかれらの賞与支給方式は、基本給[時給×173]×支給月数×成績査定(S1ーB3、120%ー40%)+(リーダー手当A×1か月)+地域手当、であった。これに対して、マネージ社員社員就業規則では、賞与について、「会社は営業成績に応じて賞与を支給することがある」とされ、支給方式については、労使協議の上、別に定めるとされ、マネージ社員で組合員の場合、社員の区分(参事、役職等)に応じて異なるが、一般社員ででは、基本給×支給月数×配分率+(リーダー手当A×1か月)+地域手当+成果加算(1人当たり5万円を査定原資として加点評価したもの)、とされていた。なお、Xは、平成25年4月の後半の時期に物損事故を起こし降車処分を受けていたが、その後の運行乗務復帰のための安全教育期間中の荷物の仕分作業で腰を痛め、26年1月20日まで公傷期間となった。また同月27日にXの復帰訓練が開始されたが、Xは車両の整備不良等を理由に年休取得したり、仕分作業の指示を拒否したり、寝不足を理由に乗務業務に就かないことがあった。さらに乗車復帰後もグループ長に執拗にクレームを述べるなどした。なお、マネージ社員とキャリア社員の間には、格付け、等級、号俸、業務区分が同じ場合、各種手当(業務インセンティブ、リーダー手当、地域手当、扶養手当、通勤手当など)は同一であり、給与(基本給の時間単価)には差はない。
 本件の争点は、@上述の差異が労働契約法20条に違反するか、AXに対する賞与の支給査定が不当に低いか、BY社の警告書に関して、パワハラとして不法行為が成立するか等である(Bは、紙数の関係で省略するが、判旨はY社のパワハラを否定)。
 〈判決の要旨〉
 裁判所は、まず争点@について、労契法20条の趣旨を次のように判示する。すなわち、有期労働契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件に相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、労契法20条に列挙されている要素を考慮して「期間の定めがあること」を理由とした不合理な労働条件の相違と認められるものを違法として禁止する、と述べる。そして、上記の労契法20条に列挙されている要素を検討し、マネージ社員とキャリア社員が、ともに運行乗務業務に従事する場合は、職務の内容、および当該業務に伴う責任の程度は同一であるとしつつも、マネージ社員に期待される役割、職務遂行能力の評価、教育訓練等を通じた人材の育成等による等級・役職への格付け等を踏まえた転勤、職務内容の変更、昇進、人材登用の可能性といった人材活用の仕組みの有無に基づく相違があり、職務内容・配置の変更の範囲に違いがあり、その違いは小さなものではないと評価している。
 Aの成果査定の問題については、使用者の広範な人事裁量権が認められており、査定が事実誤認に基づくとか、恣意的なものであるなど裁量権の範囲を逸脱・濫用の場合に限っていほうとなるとした上で、査定は当該労働者の勤務状況や勤務態度のみならず、自発性、協調性を含めてなされるもので、協調性を査定で重視することを不合理とはいえず、その基礎となる事実に誤認があるともいえず、査定krkkあが恣意的で不合理とは癒えない、とした。
 なお、政府が平成28年12月に示した「同一労働同一賃金のガイドライン案」では、賞与について、・・・

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